犬の分離不安症の見分け方!なりやすい犬種とは?原因と治し方を解説
分離不安症とは
犬の『分離不安症』とは不安障害のひとつで、飼い主さんと離れると過剰に不安や恐怖を感じてしまう症状を指します。
分離不安症は『分離不安』や『分離不安障害』とも呼ばれ、ペットだけではなく人間にも症状が見られることがあります。
分離不安症の判断基準
飼い主さんと離れる際に、落ち着かなくなったり吠えるなどの行動をとる犬は少なくありません。
しかし、10分ほど経てば吠えるのを止めたり一人遊びや眠りについたりする犬がほとんどです。
そのため、分離不安症かどうかを判断する基準として、犬が飼い主さんと離れてから10分経過したあとの様子をみる方法があります。
留守中の愛犬の様子を撮影する
一方で、飼い主さんと離れてから10分経過しても問題行動が治まらなければ、分離不安症の疑いがあると考えられます。
帰宅してからの形跡や体調のみでは断定できないため、留守中にカメラで愛犬の行動を撮影してみることも検討しましょう。
分離不安症の症状
分離不安症の疑いがある代表的な症状を4つ紹介します。
症状① 吠え続ける
飼い主さんが外出の準備をし始めると、吠え続けたり鳴いたりすることがあります。
これらは犬にはよく見られる行動ではありますが、前述したように飼い主さんが外出してからしばらくすると吠えるのをやめる犬がほとんどです。
しかし、分離不安症の犬は、飼い主さんが外出したあとも吠え続ける傾向があります。
症状② 粗相をしてしまう
普段はトイレで排泄することができるのにもかかわらず、飼い主さんの外出時や姿が見えないときに限ってトイレ以外の場所で排泄をしてしまうことがあります。
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症状③ 物を破壊する
飼い主さんが不在のときに、部屋の中にある物を破壊したり散らかしたりする行動が見られることがあります。
また物を壊すだけではなく、食いちぎって飲み込んでしまうこともあるので非常に危険です。
症状④ 体調や行動に変化が起こる
分離不安症の犬は、自分の足や尻尾を舐めたり噛んだりするといった自傷行為をしてしまうことがあります。
この場合、皮膚に炎症が起こるなどの異常が見られます。
また、下痢や嘔吐などの症状が出ることもあります。
ただし、何かしらの疾患を抱えているといった可能性もあるため、それだけでは分離不安症だと断言できません。
分離不安症かも?チェックリスト
分離不安症を上記4つの症状だけで判断することは難しいですが、下記のチェック項目に当てはまる数が多いほど疑いが強くなります。
愛犬にいくつ当てはまるかチェックしてみましょう。
- 飼い主さんと離れると吠え続ける
- トイレやお風呂など家の中で愛犬がついて回る
- 飼い主さんが見えなくなると粗相をする
- 物を壊したり、散らかしたりする
- 下痢や嘔吐をする
- 多量のよだれを垂らす
- 飼い主さんがいないときだけ食糞行動が見られる
- 飼い主さんがいないと食事をしない
- 自分の足などを噛むなどの自傷行為をする
犬の分離不安症の原因
ここでは犬の分離不安症の主な原因について紹介していきます。
原因① 環境の変化
犬の分離不安症を引き起こす原因として、下記のようなことが考えられます。
- 引っ越し
- 一緒に生活している家族の変化(赤ちゃんが生まれる)
- 家族の生活時間の変化(お留守番時間が長くなる) など
犬は環境の変化にストレスを感じやすい生き物です。
そのため、ブリーダーやペットショップで購入した犬は、環境の変化によって分離不安が起こりやすいと言われています。
愛犬のストレス軽減のために、積極的にコミュニケーションを取る、お留守番の時間を短くするなどを意識してみましょう。
また、子犬のうちは長時間の留守番やペットホテルに預けるのは避けた方が良いでしょう。
原因② 過去の辛い経験
過去に辛い経験をした犬は、分離不安症になりやすいと言われています。
例えば愛犬が保護犬だった場合、虐待や放棄をされた経験があると「飼い主さんにまた見捨てられる」と感じ、分離不安の症状が出ることがあります。
また、「留守番中に地震や大きな雷の音などで怖い思いをした」といった経験がきっかけで症状が出ることもあります。
原因③ 飼い主さんとの距離感
飼い主さんと愛犬の距離感にも原因があると言われています。
常に愛犬を甘やかしたり構い過ぎたりすると、飼い主さんが離れてしまった際に強い不安感を感じてしまうようになります。
コミュニケーション不足も危険?
一方で、放任やコミュニケーション不足も良くありません。
飼い主さんとのコミュニケーションや散歩が不足すると、犬にとってストレスとなるため、分離不安症の症状が出る一因となります。
愛犬とは程よい距離感を保つように心掛けましょう。
原因④ 病気や疾患
病気や疾患が原因となる場合もあります。
脳や甲状腺、副腎などの疾患が問題行動を引き起こしている可能性もあるため、疑わしいときは動物病院で調べてみましょう。
分離不安になりやすい犬種
分離不安症は犬種問わずに発症する可能性がありますが、なかでも発症しやすいと言われている犬種の特徴についてご紹介していきます。
トイ・プードル
トイ・プードルは、社交的・好奇心旺盛・賢いなどといった性格を持っているため、人と一緒に生活しやすい犬種と考えられています。
その反面、神経質・寂しがり屋・甘えん坊な性格も持ち合わせています。
留守番が得意だとも考えられている犬種ではありますが、実は個体の性格によっては分離不安を発症することが多い犬種だと言われています。
チワワ
チワワは勇敢・活発・愛情深い・賢いなどといった性格を持っています。
こちらも、自立心も強く留守便が得意な犬種とされています。
警戒心が強く神経質な性格も持ち合わせているため、ほかの犬種よりも不安を感じやすい可能性があります。
分離不安を発症しないために
トイ・プードルとチワワに限った話ではなく、すべての犬種が分離不安症になる可能性があります。
分離不安症の予防のためにも、子犬の頃から定期的に留守番のトレーニングをしておくと良いでしょう。
▼留守番が得意な犬種や留守番の練習方法ついての記事はこちら
分離不安の治し方とは
愛犬が分離不安症の場合、どのような対策をとれば良いのでしょうか。
ここでは5つの対処法を紹介します。
愛犬だけで過ごす時間を増やす
愛犬だけで過ごさせる時間を作り、徐々にひとりの時間を増やしていきましょう。
飼い主さんが離れてしまうと分離不安の症状が出てしまいますが、「飼い主さんは必ず帰ってくる」ということを覚えさせれば、症状は軽減されるでしょう。
最初は数分から始めてみて、その間ひとりで静かにできていたら褒めてあげてください。
様子を見ながら少しずつ時間を延ばして練習してみると良いでしょう。
外出は大したことないと認識させる
「飼い主さんが外出をする=不安」だと思わせないように意識してみましょう。
例えば、出かける際に「行ってくるね」といった声掛けはせず、出かける数分前からあまり接しないようにして、「気づいたら出かけてた」という状況に慣れさせるのもひとつの方法です。
また帰宅した際に、興奮した愛犬に対して大げさに声掛けをすることを控えてみて下さい。
構うのは、愛犬の興奮が収まってからにしましょう。
犬に「飼い主さんの外出は大したことないんだ!」という認識を持たせるまで、根気強くトレーニングしてみましょう。
愛犬が安心できる空間を作る
愛犬が安心して留守番ができるような環境を整えてあげることも大切です。
落ち着いて眠れるような狭い空間におもちゃを用意してあげたり、飼い主さんの匂いがついたお気に入りのタオルなどを置いてあげるのも良いでしょう。
また、チャイムが鳴らないように設定したり、雷や天候が悪いときにはなるべく外出を控えるようにしましょう。
ケージに入れる
愛犬をケージに入れてあげることでリラックスしてくれるかもしれません。
ケージに慣れていない犬は、ケージに入ることがストレスになってしまうことがあるので注意しましょう。
問題行動を叱らない
分離不安から発生する問題行動は、飼い主さんの気を引きたいから起こすわけではありません。
精神的な不安をコントロールできなくなっている状態なので、物を破壊したり粗相をしたりしても叱らずにいてあげてください。
騒いだり叱ったりしてしまうと、さらに精神が不安定になり問題行動が悪化してしまう可能性があります。
病院に行く
軽度の分離不安症であれば、家で行うトレーニングで効果が期待できますが、重度の場合は訓練をしても良くならない場合があります。
なかには脳や神経に問題があり、症状が出ていることもあるので、トレーニングをしてもなかなか改善されない場合は、一度獣医さんに相談してみることをおすすめします。
動物病院では投薬治療や行動療法など、犬の分離不安の原因に合わせた治療を行ってくれます。